去年の8月から、週に一回テニススクール通ってるんです。
ずっと初中級のクラスなんだけど、コーチの教え方は上手だし、他のメンバーともだんだん仲良くなってきたから楽しいし、ほどほどにやるにはすごくいいの。
ほら、オレは小学校、中学校とテニスやってたじゃん?
当時はそりゃもう、かなり上手くて、ジュニアの上級クラスだったのね。
ただ、40年ぶりにテニスやったら、ラケットの性能も格段に良くなってるし、トップスピンで打つのが常識になってるし、昔とは全然違ってます。
だから、かつての栄光は捨てて、初中級で充分なの。
何より、体力が中学生の時に比べてすごく衰えてるんだから。
今日のレッスンでコーチに「イマ○さんすごく上手くなってるから、すぐにでも中級に上がってもいいと思うんだけど、こないだのコーチ会議で、『イマ○さんのセカンドサーブ問題』ってのが議論になったんすよ。イマ○さんの、あのセカンドサーブで中級はどうなの?っていう意見があったんです」って言われたの。
オレはファーストサーブは普通にビュン!って打つのね。
入る確率は50%ぐらい。
まあ、プロでも、確率だけで言ったら大概そんなもんよね。
で、ファースト入らなかったらセカンドサーブ打つでしょ。
一般的に、セカンドサーブは入れること重視だから、スピンをかけて打つのね。
でもオレはスピンが苦手なの。
スピンかけると入らないの。
だから、オレのセカンドサーブは、上に軽くボール上げて、羽子板で羽根付きするみたいにポヨヨーンて打つの。
そうすると、フワフワーってボールが相手のサービスエリアに入る、と、こーゆーわけ。
スピンかけて入らないより、ポヨヨンサーブでも入ればゲーム進むんだから、みんな楽しめるじゃん?
そりゃ相手は、「あ、ポヨヨンサーブだ!チャンスボール!」って思うだろうけど、そう簡単に決められるもんじゃないの。
そもそもみんな素人だから、チャンスボールが来ると余計な力が入って、結構ミスるもんなのよ。
でも、コーチ会議で、「やっぱ、セカンドサーブはちゃんとスピンかけて打たないとねー」っていう意見が強くて、オレの中級は流れちゃったんだって。
てゆーか、会議でオレのセカンドサーブが議題になるなんて。
なんか、ほら、せっかくの会議なんだから、もっと重要なことを議論した方がいいんじゃないの?
ウクライナ問題とか、小麦粉の値上がりとか、堀北さんを復活させるにはどうしたらいいかとか。
「そんなわけでイマ○さん、今日からポヨヨンサーブはナシで。絶対トップスピンサーブでやってください!」って言われちゃったのです。
いや、オレは中級にならなくて初中級のままで全然いいんだけどね。
向上心ない男だから。
でも、コーチは「イマ○さんが中級に行きたくないんだったら、それは全然構わないんですけど、もし行きたくなった時にはいつでも中級OKって状態にしておきましょうよ!」って熱く言うもんだから、「はあ、そうですか…」つって従わないわけにはいかなくて。
ポヨヨンサーブは必殺武器だったのに。
翼の折れたエンジェルだよ。
で、今日はセカンドサーブを全部トップスピンで打ったんだけど、80%以上の確率で入ったわ!
練習したわけじゃないのに、なぜかトップスピンサーブが上手くなってたのよ!
さすがオレだよ。へっへーん。
そしたらコーチてば、「今日はまだまぐれかもしれないから、この調子があと2回続いたら中級昇格可と認定します」ですって。
なによ、まぐれって!失礼ね!
でも、正直、トップスピンサーブ打てたオレが一番驚いてるぐらいだから、仕方ないわね。