早期退職ブログ

早期退職後の暮らし。

午前十時の映画祭「地獄の黙示録」。

あの「地獄の黙示録」です。コッポラが「ゴッドファーザー」の1と2を撮って「巨匠」となり、すげーお金持ちになって、「俺、またすごい映画撮っちゃうぞー!」つって撮った超大作です。30代後半で撮り始めて、公開された時は40歳になったばかり。カンヌグランプリ。

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巷には「超大作」と言われる映画がよくありますが、「地獄の黙示録」に比べたら、「タイタニック」も「ロードオブザリング」も「シンゴジラ」も小さく感じます。

ヘリコプター、火薬、エキストラ、俳優、全てが凄すぎて呆然とします。

1979年の作品だからCGなんて使っておらず、有名な「ナパームで森を焼き払うシーン」や「海の向こうからワーグナーワルキューレをガンガン鳴らしながらヘリの編隊が攻めてくるシーン」も、全部リアルな撮影。金のかけ方がハンパない。金はコッポラが自分でかき集めたので、誰にも止められない。やりたい放題。

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これに匹敵する超大作つーと、「風と共に去りぬ」「ベンハー」あたりでしょうか。CGのおかげで表現手法がすごく広がったし、お金も時間も節約出来るようになったので、CGについて何も否定するものではありませんが、こうして実際に人海戦術で撮った映像はリアリテイがまったく違う。「グラディエーター」「フォレスト・ガンプ」なんて、それまで「CGはSFのもの」って思われてたのを、グーンと他のジャンルまで可能性拡げたわけですが、でも、そうは言っても、実写には敵わない。生々しさが違うのです。

 

で、こんなすごい映画を撮る人の精神状態はどんなんだろうかって言うと、コッポラはちょっと頭がおかしくなってたらしいです。あまりの大作過ぎて思うように撮影が進まないし、俳優たちは麻薬中毒がいたり、脚本無視してアドリブ芝居する人がいたりして大変だったみたい。(ここらへんはこの映画の制作の様子をまとめたドキュメンタリーを見ると分かります)

そんなわけで、映画としては正直まとまりがなくなってしまった(特に後半)けど、とにかくこんな大作に最後まで向き合って完成させたのは大したものです。こういう情熱は働き方改革みたいなものの対極あって、モノを作るというのはそういう事が大事なんだろうと思います。

 

たぶん、今後こんな映画は誰にも作れないし、大変過ぎて作る気も起きないでしょう。なので、これは歴史的にとても重要な映画です。ベトナム戦争は舞台でしかないので、「ベトナムの真実を描いてない」的な批判は的外れです。極限に置かれた人間がどうなっていくのかを見せてくれる映画です。できれば劇場で見ていただきたい。

撮影監督はビットリオストラーロ。「ラストエンペラー」のあの美しい映像を撮った人です。どのシーンもポストカードにしたいほど美しいです。これもこの映画を見るべき理由のひとつです。