大学生になった頃、バブルは弾けかかっていましたが、まだまだ世の中は浮かれておりました。
友達の中にはDCブランドの服を買ったり、プレリュードの中古を買って、六本木で扇子を振って踊る女子をナンパするような淫らな者もいましたが、オレはそういうのは苦手だったので、せいぜい渋谷の千歳会館でペンギンのビールを飲むぐらいでした。
しかし、そんなオレもやはりバブルに浮かれてしまったのか、何かをやって金を増やしてみたくなりました。
つっても、不動産を転がしたり、ゴッホの絵を買うことは出来ないので、金貨を買うことにしました。
金貨は株を買うより手堅い感じがしたし、当時はメープルリーフ金貨だのパンダ金貨だのクルーガーランド金貨だのが有名だったから、金貨を身近に感じられたのだと思います。
たぶん、大学の1年か2年だったはずですが、ちょうど昭和天皇の在位60年記念硬貨が売りに出されました。
オレはそれまでコツコツ貯めてきたお年玉やバイト代が30万円ほどあったので、それを全額はたいて、在位60年記念金貨を買いました。
ピカピカ光る3枚の金貨は、オレをとても豊かな気持ちにしてくれました。引き出しにこっそりしまった金貨を何度も取り出しては、その美しさに見入っていたものです。
さらに数年後、時代が昭和から平成に変わり、今の天皇陛下が即位されました。
その時もまた即位記念金貨が発売されたので、今度は7枚買いました。社会人になったばかりで、まだお金はそんなになかったけど、10万円金貨は最低でも10万円の価値があるってことだし、うまくすればそのうち値段も上がるかもという判断です。
こうしてオレは10枚(100万円)の金貨持ちになりました。
あれから約30年。実はその金貨たちのことをすっかり忘れておりました。つい先日まで全く思い出すことなどなかったのです。
しかし、今の天皇陛下のご退位と共に元号が変わるという話題の中で、やっと、「そういや、平成になった時、金貨を買ったような気が…」と遥か昔の記憶が蘇ったのです。
こないだ実家に帰った際、オレの「大事な物箱」を開けたら、ちゃんと金貨がありました。親に捨てられたり売り払われてなくて良かった!
そして、早速金貨を売りに出すことにしました。だって、無職なんだもん。
ところがなんと。
今売ったら幾らぐらいなのかしら、とネットで調べたところ、在位60年金貨はレプリカが大量に出回ったことと、そもそも金の含有量が少ないってことで、買い取りをしてるお店は少ないことが判明しました。
つまり、日本国の貨幣として10万円の価値はあるけど、古銭(?)としての価値は0なのです。
なので、これはコインショップで売らずに、そのまま銀行に行って自分の口座に入金しました。
一方、即位記念の10万円金貨の方は、今では13万円以上の価値があったので、コインショップに買い取ってもらいました。
というわけで、最初に買った3枚は30年経ってもそのまま10万円(計30万)、後から買った7枚は13.3万円(計93.1万)。結局、100万円の投資が123.1万円になってました。
株とかビットコインでもっと手早く儲けてる人はたくさんいるし、定期預金に30年預けておいてもこれぐらいになった気もしますが、なんかこういうのがオレっぽい気がするので満足であります。(いや、ホントは200万円ぐらいになってるのではと期待してた)