早期退職ブログ

早期退職後の暮らし。

映画番外編「これ来た、ガーン来た(邦画・前編)」

前回の洋画編に続き、邦画編よ。名作かどうかは別にして、オレが見終わって「ガーンと来た」映画です。

ただ、長くなって、途中で疲れちゃったから、今回は10本のうち半分だけ。残りはまた気が向いたらね。(順不同よ)

長いけど、読みなさいよ。巣ごもりにうってつけじゃないのよ。

 

Wの悲劇

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アイドルだった薬師丸ひろ子が本物の女優へ脱皮した作品と言われてます。

たしかに、それまでの薬師丸ひろ子とは違うのです。薬師丸ひろ子はオレより年上だけど、「野性の証明」以来、その出演作をずっと見てきたから、この映画見てる途中で、「あ、薬師丸ひろ子が変わった」というのが分かったのです。

だから、映画の最後で、薬師丸ひろ子世良公則に向かって、スカートの裾を持ってカーテンコールのポーズを取った時、ボロボロ泣けてしまったのです。「ひろ子が遠くへ行ってしまったー」みたいな。あのシーンはファンに対してのカーテンコールでもあったのだと思います。

あと、女優の顔をぶっちゃいけないってことも学びました。でも、女優じゃなくても、人の顔をぶったらいけないのよ。

 

「用心棒」

用心棒のことは以前書いたので、こっちも参照。

https://nyorizo.hatenablog.com/entry/2018/06/22/143304

ところで、オレが初めてちゃんと見た黒澤映画は「乱」でした。高3か浪人の時です。ひとつひとつのカットがとてもキレイで、見てて飽きませんでした。ただ、お話は観念的で、どこがいいのか、さっばり分からなかったです。

後日、淀川さんの評論を読んだら「この映画は、人間の醜さを、神の視点から描いてるのだ」みたいな事を言ってて、なるほどそう思って見てみると、登場人物たちの行動が滑稽で哀れに見えてきます。

些細な欲望に囚われて戦ったり裏切ったりしてる人間はなんて小さいんだろう。神様はそんな人間を天から見て嘆いてらっしゃる。主人公はこの映画には出てこない『神様』だったのね、と気付かされました。

この時、「映画って、物語を追ってるだけじゃ理解出来ないんだなー」って、淀川さんに教えてもらったのでした。

つーか、関係ない「乱」のこと書いちゃったわね。

 

家族ゲーム

高校の時、映画をたくさん見るようになったけど、見るのは洋画ばかりでした。

まだ日本映画は、黒澤明市川崑山田洋次今村昌平などの巨匠・名匠が牽引してて、それに続くのも大島渚篠田正浩あたりで、映画を見始めた高校生にとっては、古臭くて魅力的ではなかったのです。

そんな頃、「ぴあ」では、にっかつロマンポルノや自主映画出身の若手監督の名前を頻繁に見かけるようになりました。でも、オレは金払ってまで貧乏くさい映画を見る気にはなかなかなれずにいました。

そんな若手監督の中から一歩抜け出してきたのが森田芳光です。「ぴあ」では森田監督の「家族ゲーム」が「すごい面白い!森田芳光は天才!」みたいな扱いになってて、「仕方ない、それじゃオレも見てみるか」つって、見に行ったのです。

そしたら、今まで見たことのない映画で驚きました。間合い、カット割り、編集、演技。全てが斬新でした。(オレにとっては、ってことね)

それと、それまで「野獣死すべし」や「蘇る金狼」みたいなネクラ映画のアクション俳優としか思ってなかった松田優作の演技にもビックリしました。すげー。松田優作、こんなに上手い俳優だったのか!って。(あと、戸川純にも感動しました)

金をかけなくても、面白い映画が作れるのね、映画ってのは、お金じゃないのよ、作り手の才能とアイデア次第で、洋画に負けない面白いものが作れるんだわ、ってことを知ったのでした。

 

「転校生」

先日亡くなった大林宣彦監督作品。むかし、日テレの水曜ロードショーでよくかかってました。たぶん、夏休みになる度にかかってたんじゃないかしら。今で言うと、ジブリ映画みたいな扱いだったのよね。

オレも初めて見たのはテレビです。すごいゲラゲラ笑ったのを覚えてます。小林聡美、最高だったね。そして、行ったことのない尾道の街並みに郷愁を感じました。高校生のくせに。

たぶん、この映画は、「子供時代との訣別」と「故郷との訣別」みたいなことがテーマにあって、それが同世代のオレの心に響いたんじゃないかしら。もう、子供時代は戻ってこないんだ、ってことを気付かせてくれた気がするのです。「さよなら、あたしー」ってね。

 

「それから」

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もう1本森田芳光監督と松田優作コンビです。

あの頃、森田芳光松田優作もとんがってて、なのに敢えてこの2人は夏目漱石を選びました。とんがりコンビが日本文学の傑作に挑戦したのです。「俺ら、とんがってるだけじゃないんだぜ。ちゃんと文芸作品だって作れるんだぜ」ってことだと思います。

もう、見事としか言いようがないです。全てに圧倒されます。色彩、音楽、松田優作の芝居、藤谷美和子の儚い美しさ。いろんなものが、グワーって押し寄せてくるのです。

この映画、今となっては知らない人が多くなってしまいました。森田芳光の代表作と言えば「家族ゲーム」「失楽園」だし、松田優作の代表作も「ブラックレイン」ってことになってて、「それから」がそういう場で挙げられることはないです。

でも、「それから」こそが、森田芳光松田優作が最も脂の乗ってた時期の作品だと思うのです。天才監督と天才俳優の最高潮が満喫できます。

 

というワケで、疲れちゃったから、残りはまた今度ね。なんでこんな長くなっちゃったのかしら。自分で思ってた以上に邦画には思い入れがあったってことかしらねえ。

残りの5本はまたそのうち。

犬神家の一族(1976年版)」

八甲田山

「お葬式」

その男、凶暴につき

千と千尋の神隠し